セブンイレブン100円ビール「ちょい生」販売中止の謎に迫る

 

セブン-イレブンが、7月17日から東京都内などの数店舗で計画していた生ビールサーバーを使った生ビールの試験販売が、中止に追い込まれた。

「ちょい生」、Sサイズ100円、Mサイズ190円――。缶ビールはコンビニの店頭でどれだけ安くても税込み220円前後の値付けだ。そして、どんなに安い居酒屋でも生ビールサーバーで提供される生ビールは、通常300円以上というのが相場。1杯の絶対量はともかく、セブンが試験販売しようとした生ビールは「格安」といえる。

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全国に約2万店のネットワークを持つセブンが、全国展開を始める前に一部の地域や店舗で試験的にサービスを導入して、反響や効果を見極めるのは日常的な出来事だ。

ところが今回は、「反響が大きく、需要が高まると想定され、試験導入を予定していたお店での対応が難しいと判断した」(セブン&アイ・ホールディングス広報センター)

「基本は取りやめ、今後は決まっていない」

東洋経済オンラインの取材に対し、セブン&アイ・ホールディングス広報センターは「(生ビールの販売については)基本は取りやめで、今後のことは決まっていない。お客様からはさまざまなご意見をいただいた」と答えた。もともと試験的な取り組みの詳細をセブン側から公表することはない。今回の騒動は一部店舗の試験販売に気づいた一般消費者がSNSで情報発信し、それを一部のネットメディアが拾って拡散して広がったというのが真相だろう。品質の問題を指摘する声も少なくなかった。

しかし、これまでも、予想を上回るレベルでの需要に応えてきたのが、コンビニエンスストアであり、セブンだったはずだ。

そもそも、品質維持が難しければ、品質が維持できる数量で販売すればいい。もちろん、品切れは、まだまだ続く夏にマイナスイメージを植え付ける。せっかくセブンに来店したお客に落胆をもたらすからだ。

著者は、セブンの生ビール販売を聞いた瞬間に、コンビニの新たな主力商品になるのではないかと喝采した。しかし、同時に危惧も抱いた。実際に、セブンの生ビール販売中止には、図らずもさまざまな疑念をひとびとに抱かせるにいたった。

私は、そもそも「品質を維持できるレベルにない」以外に、セブンの生ビール販売のハードルが高かった理由は3つあったと考えている。

 

(1)未成年への酒類販売防止

ちょっと前、たとえば20年前であれば、未成年でも酒類を購入することは容易だった。居酒屋でも、未成年にしか見えないひとたちが、大学の新歓コンパで飲酒していた。しかし、いまでは身分証明書を求められるし、コンビニでも「未成年ではないボタン」を押さねばならない。

たとえば購入者が20歳以上だと偽って、酒類を購入したらどうなるだろうか。一義的には購入者が悪いように思えるものの、実際は、店側がその罪を問われる。

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未成年への販売をちゃんと抑制できるか

混雑する店舗では、未成年であるかの確認時間が取れないことも予想される。また、そのチェックの確実性も疑問視されるだろう。とくに、缶ビールと違って、生ビールは、その場で飲むはずで、言い訳がきかない。

 

(2)飲酒運転対策

同時に、販売側には、飲酒運転の対策もある。

警察の資料によると「主な飲酒場所は、居酒屋などの飲食店が約57%を占める」「飲酒終了から死亡事故発生までの経過時間は、飲酒直後から1時間までが最も多く発生している」とある。つまり、セブン-イレブンは、飲酒死亡事故の「拠点」となるリスクを有していた。

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また、警視庁のマニュアルによると「まず、お客様が車で来たかどうかを確認しましょう」からはじまり、「飲酒したお客様が『運転代行の利用』や『家族等の迎え』がなく運転して帰ろうとしていないかを確認しましょう」とあり、これを多忙なコンビニエンスストアが完全に遂行できるかは不透明だ。

 

(3)小規模事業者への配慮

そうはいっても未成年者へも飲酒運転が疑われる人へも、売らなければいい。飲酒運転は買った人の自己責任ともいえる。

ということで、3つ目の理由は小規模事業者に配慮した可能性が捨てきれないことだ。

セブンの生ビール販売のニュースを聞いた際に、「これで小規模な酒屋は絶滅だろうな」と感じた人もいただろう。もし、セブンが全店でSサイズ100円、Mサイズ190円の生ビールを販売したら、小規模事業者は絶望的な影響を受ける可能性はある。

大規模事業者のビール安売りは厳しく監視されている

公正取引委員会は、大規模事業者がビールを廉価販売して客寄せに使うことを、かなり厳しく監視している。結果的にそれは、商店街のなかにあるような小さな酒屋、小規模小売店を保護する結果をもたらした。

酒税法の改正を受けて、2017年6月からスーパーマーケット等ではビールが値上げされた。仕掛けたのは国税庁で、目的は酒類の廉価販売を規制するため。小売店は、仕入れ価格+販売管理費の合計コストよりも廉価な価格でビールを販売できなくなった。

国税庁はもともと廉価販売について指導のみを行ってきた。しかし法改正後は廉価販売について、売店酒類販売免許も取り消せるようになった。

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法改正後、アサヒビールが業務用のビールを安売りしたことで改善指示を受けたと一部で報じられた。ビール離れが続くなか、私は安価販売についてはむしろ良い施策のように感じるが、行政は逆に安価販売を禁じようとしている。もちろん、それはわからなくはない。優越的な立場の買い手から、売り手を守るためだ。しかし、結果的に小規模な酒類販売小売店を助ける方向に動いている。(Livedoorニュースより)

セブン-イレブンの「生ビール」販売に3つのハードル 実現の可能性低い? - ライブドアニュース

「ちょい生」 販売中止の謎に迫る

 

まずはじめにセブンイレブン「品質を維持できるレベルにない」と言っているが、本当でしょうか。セブンイレブンの主な役割は販売・機械のメンテナンス等であり、本質的な品質維持の解決策はメーカー側に委ねられるのではないでしょうか。「ちょい飲み」を始めることにより、ビール全体の需要喚起につながる可能性は勿論あるものの、基本的にはマーケット内でのパイの奪い合いになるため、多少のタイムラグがあるかもしれないが、供給が需要に追い付かないとは考え難い。また、記事の中でもコメントがあるように、品質が維持できる数量で販売すれば特に問題はないものと思います。

 

次に、上記の理由(1)”未成年への酒類販売防止”について考えてみると、「ちょい生」販売が問題か否かの前に、既にコンビニでは多種のアルコールを販売していることが頭に浮かびます。また、理由(2)”飲酒運転対策”についても、同様の理由で「ちょい生」販売だけダメとの理由には直接結びつかないように思います。よって、理由(3)の”小規模事業者への配慮”及び公正取引委員会の介入が、現在想定される一番近い理由に思われますが、あまりにも早い意思決定であったので、相当な圧力が国からかかったのではないでしょうか。

(但し、セブンイレブン側はこのプロジェクトを始動する段階で国の介入は充分想定できたような気がしますが...)

どうしてもコンビニで「ちょい飲み」したい方は...

どうしてもコンビニで飲みたいという方は、NewDaysが一部店舗で「樽生ビール」を販売しているので、どうぞ気兼ねなく飲んで電車でお帰り下さい。

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