人生100年時代の個人M&A 中小企業のM&Aの際にチェックすべき点とは

サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 人生100年時代の個人

サラリーマンには定年・早期退職後、飲食業を始める夢を描く人がたくさんいます。しかし、それは「地獄への道」。廃業率は20%で全業種トップ。実際には素人では勝てない世界。一方で、起業を考える人もたくさんいます。こちらも「地獄」。日本で起業して10年後に残っている会社はわずか5%。

著者の三戸さんは言います。業界大手企業でマネジメント経験があるなら、会社を買って社長になったほうが遥かにいい、と。黒字経営であるにもかかわらず、後継者不在のために休廃業する優良中小企業はたくさんあります。事実、中小企業380万社の約7割で後継者がおらず、中には株式1円でもいいから譲りたいと考えているところも。

在職時同様30~50人規模のチームを率いて、今度はサラリーマンではなく社長として力量を発揮し、役員報酬を得て、最後は会社を売却してキャピタルゲインを手にする。雇われる人生を脱して、資本家になる。

中小企業が後継者不足で事業承継に悩む「大廃業時代」は、本当はサラリーマンの「期間限定」の大チャンス。本書は、人生を変える「あかるい資本家講座」です。

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(講談社BOOK倶楽部より)

『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 人生100年時代の個人M&A入門』(三戸 政和):講談社+α新書|講談社BOOK倶楽部

 

 

中小企業の大半は後継者不足

帝国データバンクの『2016年社長分析』によれば、国内企業の3分の2にあたる66.1%が後継者不在で、その割合は上昇傾向。社長の年代別に見ると、社長が60歳代の会社で54.3%、70歳代で43.7%、80歳以上でも34.7%が後継者不在となっている。事態は深刻なのである。

中小零細ほどこの傾向は顕著で、売上高10億円~100億円未満の会社で57.5%が、売上高1億円~10億円未満の会社で68.5%が、売上高1億円未満の会社で78.2%が後継者不在というのが現状である。

日本には約400万社の企業があるわけですが、そのうち中小企業(売上100億円以下)が380万社です。その多くが後継者の不在に悩んでいると。実際に廃業した会社の実に50%は利益が出ている中での廃業のようである。

 

起業ではなくM&A(出資)の方が安全!?

社長になろうとする場合、一般的に起業(最近の言葉だとスタートアップ)するという方法が考えられるが、著者は安易な起業には否定的。そもそも、起業で成功するのは本当にごく僅かな人で、大部分は失敗している。普通のサラリーマンは、ゼロから何かを立ち上げるという事はほとんどなく、起業の難しさを甘く見ている。特に、定年後に安易に飲食店を開くというのが、ベンチャーキャピタリストの経験からいかに難しいかが語られている。よほど情熱がない限り、起業なんかしない方が良い問い合わせうことである。

 

中小企業のM&A案件はどのように探すか

ひと昔前ならば、企業の“身売り”に関する情報はトップシークレットで、銀行などを除けば普通のサラリーマンが知る事は出来なかった。しかし最近では、中小企業のM&Aを仲介する企業が出てきており、ネット上で探すことを可能になっている。

 

まず挙げられるのは、個人向けのM&A仲介業者を利用することだ。各都道府県には、中小企業庁の外郭団体である事業引継ぎ支援センターが存在し、ほとんどは各自治体の商工会議所の中にある。担当者への相談は無料なので、足を運んでみるのがいいだろう。このような情報を見て、興味を持った会社の購入を相談することができるのだ。

 

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「TRANBI」の場合、利用には会員登録が必須だが、登録料、相談料、そして購入先の企業とのマッチング(連絡先交換)料はすべて無料となっている。

一方で、前出の三戸氏が「奥の手」として勧めるのが、「現役時代」の取引先を買収する方法だ。

「会社を買ううえでもっとも重要なのは、『自分の現役時代のノウハウを活かすことができる』という点です。全く知らない業界に手を出そうとすれば勉強も必要ですし、失敗のリスクも高くなる。取引相手の会社なら、事業の方針も、社員のこともわかる。スムーズに事業を継ぐことができるため、より楽をしながら稼ぐことができます」

 

投資としての魅力

「老後苦」生活に陥らないためには、どのようにおカネを運用すればよいのか。銀行の言いなりで投信に300万円を入れるようなことはしてはいけない。そのおカネを上手く運用して、豊かな老後生活を送るためのテクニックとは、つまり定年後に再雇用などで雇われるのではなく、社長になってしまうのである。社長として再スタートを切れば、老後資金だけではなく、新たなやりがいも見つかるかもしれない。

 

 

M&Aの相場(一般的な買収価格)

M&Aには、資産ー負債=純資産に、営業利益の3~5年分を足す金額がベースであるという考えです。つまり、「純資産+営業利益×3~5」がM&Aの算定方法であると。とにかく、当たり前ですが、「ポテンシャルよりも価値が低く評価されている、宝石のようなヴィンテージ企業を見つけて買う」こと。

中小企業の売買は、情報の非対称性を用いて割安な金額で買うこと、また借入金をうまく使って少ない自己資金で行うことなど、不動産投資に似ている点が多くある。投資というと、債券や上場企業の株など金融資産がまず思い浮かぶが、それだけで大成功するのはなかなか難しく、不動産投資や企業買収などにチャレンジしないといけない。当然リスクは伴うが、結局はリスクを適切にとって投資をしなければ、勝ち組にはなれないということなのだろう。

 

M&Aの際にまずチェックすべき点

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(1)一般的に後継者がいない場合は、赤の他人に売り渡すよりまず社内にそれにふさわしい人物がいないか探します。その場合、マネジメント能力に欠けるとか、引き受ける側にそこまでの意思がないケースが想定されます。その場合、廃業すべきか売却すべきかを経済価値で判断することになりますが、売却を選択する場合は廃業費用が莫大にかかるケースが想定されます。

 

(2)中小企業を買収する場合、ネックになりうるのが銀行等からの借入に伴う連帯保証人です。中小企業の信用力は、その会社の代表者及び代表者が所有する資産を一体と見做すことが多い。近年「経営者保証に関するガイドライン」が策定され、「法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者に個人保証を求めないこと」が示されましたが、依然多くの銀行では代表者個人の資産を見合いに貸付を行っているケースが多いのが実情。借入がない会社であれば、その点を心配する必要がありませんんが、その代わりに買収価格が低いこと=収益力が弱いことを意味すると思われます。

 

(3)少人数の会社で特に製造業など一部の社員のスキルに頼っている会社は、その社員が抜けた場合の対策を考える必要があります。自分が代わりにできるような業種であれば、最悪バイト等でもカバーできるかもしれませんが、熟練工となると代替要員を探すのは簡単ではありません。

 

(4)企業を存続させる場合、借入金や収益に目を奪われがちですが、忘れてはいけないのは中古住宅や中古車と同様にメンテナンス費用がかかるかどうかです。特に製造業の場合は、一定期間中に設備投資を行うのが普通であり、機械設備によっては数千万円から1億円以上するものまであります。よって、ある程度の資金調達が可能かどうか予め検討する必要があります。

 

(5)これと合わせて気をつけないといけないのが、保証・訴訟等の偶発債務などの簿外債務や飛ばしなどの会計操作です。特に、中小企業の場合は、未払賞与、退職給付債務、貸倒引当金がバランスシート上に計上されていないことが多いです。

 

上記の通りM&Aには投資としての魅力はあるものの様々なリスクも伴うのであり、しっかりの情報収集をする必要があると思われます。