カルロス・ゴーン 会社を私物化 今後の行方は?

会社を私物化した主な手口

1.オランダのジーア社は、日産が50億円超で設立した会社で、実体のないペーパーカンパニー2法人を通じて、2011年から翌年にかけてリオやベイルートの高級住宅を購入させていた。問題の2法人はいずれも「パナマ文書」などで問題にされたタックスヘイブン租税回避地)に設立されていた。

住宅の購入費はリオが6億円で、ベイルートが15億円だった。この計21億円は、日産が投資名目で用意した。高級住宅はいずれもゴーン氏が私的に利用していたが、有価証券報告書にはゴーン氏の報酬としては記載されていなかった。

 

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リオとベイルートだけではない。フランス・パリやアメリカ・ニューヨークでも同様に日産の資産を私物化していたととの疑惑がある。

2.さらにデリバティブ取引で生じた損金を日産に負わせた。この問題の取引は、2008年に通貨のデリバティブ取引で発生した約17億円の私的損失を日産に付け替えようとしたもの。この取引に当時、新生銀行のキャピタルマーケッツ部長だった日銀審議委員の政井貴子氏が関与していたという。

政井氏は11月29日、福岡市での講演後の会見で記者団からこの問題について聞かれ、「守秘義務の観点から、新生銀が取引に関与していたかを含め答えは差し控える」とした。但し、10年も前のことであり、仮に犯罪が成立するとしても既に公訴時効が完成している。

 

3.ヨットクラブの会員費や家族旅行の代金を出させたり、自分の姉にアドバイザー契約を結ばせたりして多額の資金を提供させていたという疑惑も報じられている。姉の名前は「クロディーヌ(Claudine)で、フランスのリヨン大学を卒業し、パリ・デカルト大学(パリV)などの大学院で民族学研究をした。

 

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1995年に「Netune Ltda」というインターネット決済や電子取引の戦略などに関するコンサルティングサービスを提供する会社の立ち上げに協力し、責任者に就任した。また、2013年3月から2017年3月まで、フランスとブラジルの商工会議所の会長を務めました。

 

4.日産の株価の上昇と連動した額の資金を受け取れるストック・アプリシエーション権(SAR)による報酬(4年間で40億円)が記載されていなかった。仮にゴーンが「個人情報だからSARは記載しないように」などと高圧的に指示した事情があったとしても、財務情報の開示は上場企業の法人としての義務であり、日産は会社として8年も虚偽記載を放置していたことになる。よって、会社として黙認してきたとすれば、当時の取締役も善管注意義務違反を問われかねない状況である。

 

特別背任で立件か!?

通常、個人が3年間で計1億円以上の所得を隠しているとみられた場合、国税当局は査察と呼ばれる強制捜索でたまり(隠し資産)を見つけ出し、脱税(所得税法違反)の罪で検察庁に告発する。

但し、脱税で立件するにはゴーン氏を日本の居住者と認定する必要がある。ゴーン氏の国籍はブラジルとみられ、年間3分の2を海外で生活したという。国税当局はこれまで1年の半分以上を海外に滞在していた人物にも課税したことはある。

 

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今後の焦点は、前会長が新たな容疑で再逮捕されるかどうか。複数の司法関係者は東京地検は前会長を再逮捕し、捜査は長期化するとみている。会社に無用な海外の住宅などを買わせたとなれば、それだけで会社の財産を害していることになる。容疑としては、会社法違反(特別背任)が本命と言われている。

 

仮に特別背任が立件されることになれば、現経営陣も無傷では済まない。不正に積極的に協力していれば、刑事責任が追及される。捜査に協力する見返りに刑事処分を軽くしてもらう司法取引もあるが、会社に損害を与える重大な犯罪だけに、訴追リスクは低くない。刑事責任を免れても、株主代表訴訟などで民事上の責任を負うこともあり得る。

 

ゴーン容疑者に“最強の味方” 米の著名弁護士事務所と契約

ゴーン容疑者は、ウォールストリートを代表する米大手金融機関数十社を顧客に持つ著名法律事務所米法律事務所ポール・ワイス・リフキンド・ワートン・アンド・ギャリソンと契約した。同事務所のブラッド・カープ会長とパートナーのマイケル・ゲルツマン氏がゴーンを担当する。

カープ会長は、世界最大規模の政府系ファンド、アブダビ投資庁(ADIA)が2009年、米金融大手シティグループへの75億ドルの出資をめぐり、詐欺的な不実表示があったとして40億ドル超の賠償金を求めた裁判で、シティの弁護を行い、勝利したことでも知られる超大物弁護士だ。

日仏だけでなく世界を巻き込んだ複雑な展開となりそうだ。いずれにしても長期化は避けられない様相を呈している。今後の進展を、注意深く見守りたい。