「シャイロックの子供たち」池井戸潤著 池上線長原を舞台にした隠れた名作

シャイロックの子供たち

池井戸 潤 著

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「現金が足りないんです」。銀行の支店で起こった現金紛失事件。捜索の結果、当日の日付の入った札束の帯封が女子行員のショルダーバッグの中から発見され、疑いがかかる。女子行員は盗ったことを否定し、ミスを隠したい銀行は支店長らが金を出し合って補填をすることに。そのうち、別の男性行員が失踪――。

舞台は、東京第一銀行長原支店。何処にでもある銀行で、ある日100万円の紛失事件が起きた。女性行員の北川愛理に疑いがかかるが、愛理をかばっていた上司・西川雅博は失踪を遂げる。おまけに同僚の遠藤拓治は精神を病んでしまい銀行内は大混乱。一体事件の犯人は誰なのか。長原支店はどうなってしまうのか。

中小企業や町工場がひしめき合う場所に立地し、それらの顧客を主な取引先とする銀行を舞台に、〝たたき上げ〟の誇り、格差のある社内恋愛、家族への思い、上らない成績……事件の裏に透ける行員たちの人間的葛藤を描く。

憎らしい上司も実は高卒採用ということにコンプレックスを抱いているし、役立たずの同僚も家に帰れば温かい家庭があり、誰もがプライドのため、そして家族のために出世を夢見ているなど、銀行という組織を通して、普通に働き、普通に暮らすことの困難さを鮮烈に描いている。

信念に基づいた正しいはずの決断が他の誰かを傷つけ、窮地に追いやっていく。そして、ある者は遂に犯罪へと手を染めてしまう…。会社とは何なのか。働く意味とは何なのかを考えさせられる一冊。

 

遠藤が課長と向かった洗足池板金は長原から坂を下ったところにある洗足池のほとりにある千束八幡神社の境内。そこにいた社長とは...

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シャイロックとは?

シェイクスピアの「ヴェニスの商人」に登場する人物で、悪辣、非道、強欲なユダヤ人の金貸しとして描かれている。主人公であるアントーニオが彼から借金をする際に「金を返せないときには、アントーニオの体の肉を1ポンド(470g)切り取らせる」という証文にサインをさせる。

後日、アントーニオが金を返せなくなった際に法廷にこの証文を持ち込み、アントーニオの肉を刻もうとするが、親友の妻の機転によって一転、全財産を失う事になる。

この事から強欲な人物を彼の名を取ってシャイロックと称する。

 

池井戸潤

1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学文学部人間関係学科、法学部法律学科卒。1988年、旧三菱銀行(現在の三菱UFJ銀行)に入行。退社後、コンサルタント業のほか、ビジネス書の執筆を手がける。

下町ロケット直木賞を取った作家で、半沢直樹シリーズでも有名な池井戸さんだが、舞台となる「東京第一銀行長原支店」は、池井戸氏が銀行員時代に勤務していた「三菱UFJ銀行長原支店」がモデルで、近隣の限られた範囲が舞台になっている。尚、池井戸氏の作品では、長原を始め東急池上線沿線の様子が頻繁に出てきます。

 

池井戸潤氏の主な代表作】

半沢直樹シリーズ

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花咲舞シリーズ

下町ロケットシリーズ

半沢直樹」、「花咲舞」シリーズや本作は、まさに池井戸氏が従事した銀行業務が舞台となっていますね。「シャイロックの子供たち」は、2006年の作品にて、一連の銀行シリーズの中で描かれたもので、ストーリーに派手さはありませんが、読み応えは十分にあります。