航空業界・鉄道業界の経営危機と政府による救済の必要性

 

航空業界の苦境

 

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 新型コロナウイルスの感染拡大による人の移動が止まり、需要が急減して世界の航空業界が苦境に陥っている。

全世界では第1~3四半期(1~9月)の航空会社の座席供給量が最大で3分の2減少する可能性がある。需要が第3四半期もしくはそれ以降に回復し始めると仮定した場合、利用者は67%減の11億1,700万人減、収入は2,530億ドル(27兆2,200億円)減と推定される。

 

 タイ国際航空などの経営破綻が出る一方、各国政府は支援を本格化している。グローバルで航空会社を国有化する動きが世界的に拡大している。新型コロナウイルス危機で旅行需要が冷え込む中、経営危機に陥った「空の交通インフラ」を救済するためだ。

 

「政府の関心は救済だけでなく、国を代表する航空会社の再建にある」。イタリアのパトゥアネッリ産業相は4月下旬、アリタリア航空の完全国有化を正式表明した。同社は長年の経営不振で2017年から政府の管理下にあったが、株式売却計画を撤回し、6月から新体制で経営再建を目指す。

 

 ポルトガルのコスタ首相もTAPポルトガル航空について「国有化の可能性を排除しない。不可欠な企業を失うリスクは取らない」と明言。

 

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 フランスもエールフランスなどを「必要なら国有化する」(ルメール経済・財務相)としており、既に70億ユーロ(約8,100億円)の政府支援を決めた。

 

 米国は航空会社を補助金や低利融資で支援。アジアでも公的支援の動きが出ており、2008年のリーマン・ショック後に一部の金融機関が国有化されたのになぞらえる向きもある。

 

鉄道業界の苦境(新幹線利用の大幅減少)

 

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 JR東日本によると、3月の北陸新幹線・大宮―高崎間の利用者は前年同月比53%減。東北・上越新幹線も同様の数字だったという。4月10日のJR西日本の発表によると、3月の新幹線の利用状況は山陽が58%減、北陸が57%減だった。4月1〜7日の実績は山陽が76%減、北陸が80%とさらに落ち込んだ。

 緊急事態宣言発令後はさらに落ち込み、4月8〜10日の利用状況は山陽が85%減、北陸が88%減。週末の4月11〜12日は山陽が91%減、北陸が93%減だった。JR東海は4月16日に東海道新幹線の利用客について3月は前年比59%減、4月1〜15日までの実績は85%減と発表した。

 

 JR東日本の定期外旅客収入は年間約1兆3000億円なので、仮にこれが半減すると、1カ月当たり約550億円もの減収要因となる。ちなみにJR東日本の2019年度(2019年4月〜2020年3月)連結決算は、売上高が前期比1.8%減の2兆9466億円、営業利益が同21.5%減の3,808億円だった。東日本大震災の影響を受けた2010年度の決算は、売上高は前期比1.4%減だったが、営業利益は0.1%増と持ちこたえた。新型コロナウイルスJR東日本の業績に与えた影響は東日本大震災以上だった。

 

 在宅勤務の拡大など通勤スタイルそのものの転換も始まっており、今後の定期旅客収入にも影響を及ぼすと思われる。新型コロナウイルスの終息までには数カ月以上を要するとされており、2020年度はJR発足以来最大の減収になることは確実だ。

 

 JR東海の2019年度決算は、連結売上高が前期比1.8%減の1兆8,446億円、営業利益は同7.6%減の6,561億円。新型コロナウイルスが売り上げに与えた影響は運輸業で約640億円、流通業で約70億円、不動産業で約10億円という。

 

 単独決算の1~3月期を抜き出すと売上高が2975億円、営業利益は376億円。JR東日本と違って黒字を維持した。とはいえ、前年度の第4四半期の売上高は3,523億円、営業利益は990億円だったので、営業利益は614億円と大幅減益となっている。



リニア中央新幹線プロジェクト

 

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 リニアは2027年に名古屋までを先行して開業し、その後、2037年に大阪まで延伸の予定。すでに工事が始まっていますが、今回のコロナ危機によって半数の区域で工事が中断しており、今後の見通しは確実ではない。しかも、一部地域では地元自治体との間で環境対策をめぐる対立が発生しており、着工できていない工区もある状況。コロナの影響が長期化した場合、工事がさらに後ズレする可能性は否定できない状況。

 

 リニア建設は当初、政府が主導するはずでしたが、紆余曲折を経て、基本的にJR東海の自己負担で実施されることになりました。しかし、総工費は9兆円に達する見通しであり、1社が負担するには金額が大きく、JR東海だけでの負担はやや現実的ではなくありつつある状況である。



 新型コロナウイルスの感染拡大で”全国の交通事業者の売り上げは少なくとも年間3.5兆円減る”との試算結果がある。減収額は、鉄道、タクシー、バス、航空、船舶といった各交通手段の2016度の営業収入に、国土交通省などが公表している3月の減収率を掛け合わせて算定した。4月の減収率は実績が未公表のため、JRの在来線や路線バス、タクシーなど主に都市内での移動に使われる交通手段は60%減、新幹線など都市間移動は90%減と仮定。

 

 その結果、6月初めから需要が回復する楽観的なシナリオでも年間3.5兆円、政府による緊急事態宣言が12月まで断続的に続くと想定した悲観的なシナリオでは8.3兆円の減収になると推計された。JRや大手私鉄、航空会社などを除き、地域の交通を支える地方の中小事業者に限っても最小1兆円、最大2.3兆円の損失が見込まれる。

 

 各事業者は運休や減便などで経費節減を図るが、例えば鉄道事業では車両を動かす燃料費の5%程度しかコストを抑制できないという。交通事業の支出は、人件費や修繕費など運行に関係なく必要な「固定費」の割合が高いためだ。

 

政府による救済策

 

 交通政策基本法では、第8条で「国は交通に関する基本施策についての基本理念にのっとり、交通に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する」と定める。第9条では、地方公共団体についても、基本理念にのっとって、国との適切な役割分担を踏まえて施策の策定、実施をする責務を有するとしている。

 

 すでに新型コロナウイルス感染症対策で国は25兆円超の補正予算を成立させ、さらに第2次補正予算も予定している。厳しい財政状況下であるが、個々人への直接支援と同じように、鉄道を含む公共交通機関への支援は、インフラの確保を通じて間接的に市民生活の維持と発展に資するという点で欠かすことができないものである。

 

「利用者の急減で多くの交通事業者が経営の危機にある。交通事業者が提供しているサービスは公共性が高く、損失分は国が全額補塡すべきと思われる。

国と地方公共団体の責務の1つとして、鉄道軌道整備法に基づく欠損補助を修正した上で復活させる方法や、時限立法による支援、その他の補助制度により公共交通機関の維持・支援が必要不可欠である。