盛り上がらないマイナポイント事業とその背景について

7月1日から申し込みが開始しているマイナポイント事業は、昨年12月に閣議決定された経済対策で、個人消費を活性化させるために政府が推進している施策。マイナンバーカードやキャッシュレス決済の普及・促進も兼ねていて、マイナカードを取得して一定の手続きをした人が9月1日~3月31日までの間に、自分で選んだ決済方法で買い物などをした時に、決済額の25%の5000円(上限)相当が貰えるというもの。

 

最大5000円分還元! 総務省「マイナポイント」の事前申込受付が ...

 

 

12桁のマイナンバーは既に国民全員に割り当てられて、顔写真つきのカードの交付は本人の申請に基づき、2016年1月にスタートした。本人確認ができる電子証明書も付いており、政府は「安全・安心で利便性の高いデジタル社会の基盤」と位置付けて、2023年3月末には「ほとんどの住民が保有する」ことを目指している。

現状では交付率は目標未達となる見込み

マイナンバーカードの交付枚数は2020年4月時点で約2000万。 総務省は元々20年7月末の目標を4000万枚に設定していたが、約2865万枚にとどまるなど低空飛行を続けている。

 

こうした現状に政府は、交付率の引き上げを狙ってなのかマイナンバーカードの多機能化の動きを強めている。来年3月からは健康保険証としても利用できるようになるほか、運転免許証との一体化を検討する計画も既に明らかになっている。また、新型コロナウイルス対策の給付金支給が遅れたことをきっかけに、預貯金口座との紐付け義務化の検討も始まっている。

 

広告費予算は53億円8000万円で既に半分を投入済み

 

舘ひろし,飯尾和樹 総務省 マイナポイント事業 CM マイナポイント広報 ...

 

総務省は4000万人によるマイナンバーカードの申し込みを目標に広報費に53億8000万円を計上している。ここ何ヶ月か「マイナちゃん」の着ぐるみを着た館ひろしのCMを見ない日はないが、一方で、広報費の半分をつぎこんだCM攻勢とは裏腹に申し込みは目標の1割余の432万人(8月下旬時点)と伸び悩んでいる。残りの広告費だけでは目標達成は見込めないため、今後施策の転換や追加予算の検討が必要となることは間違いない。館ひろしに罪はないかもしれないが、これでは結局、テレビ局と広告代理店が儲かっただけはないだろうか。



マイナンバーカード の申請から受取りまで約3〜4ヶ月かかる

マイナンバーカード申請から、受取までの期間は、2カ月が目安。 市区町村によっては、マイナンバーカード交付窓口の混雑を緩和するために、交付通知書の発送を調整する場合もある。 

 

交付通知書が届いた後に、同封されている「マイナンバーカード(個人番号カード)受け取りのご案内」を確認の上、受け取りを希望する日時と場所を事前に予約する必要があるが、市区町村により異なるものの現時点では約1から2ヶ月かかっている。

 

申請から受取りまで約3〜4ヶ月と気が遠くなるほど時間がかかるが、加えてマイナポイントの手続きも複雑であり、かなり評判が悪い。



申請しない理由は”必要性が感じられない”と”情報漏洩が心配”

 

見切り発車のマイナンバー制度…国民・事業者・行政機関の手間増加で ...

 

 

政府が2018年10月に実施したマイナンバー制度に関する世論調査で、カードを「取得していないし、今後も取得する予定はない」との回答が53.0%に達し、その理由(複数回答)として26.9%の人が「情報漏洩が心配」を挙げていた(最多は「必要性が感じられない」の57.6%)。

 

マイナンバー制度のメリットを享受している国

社会保障世界一と呼ばれているスウェーデンでは、氏名や住所などの基本的な個人情報に加え、クレジットカード情報や家族の所得・資産などが管理され、新たな手続きをすることなく、すべての福祉サービスを受けることができる。

また、面倒な確定申告も、個人の収入データを全て国が把握しているため、国から確定申告の書類が個人に届きます。その書類を確認して、サインをするだけで確定申告が済んでしまうというのも、マイナンバー制度ならではのメリットと言える。

資源が乏しく、少子高齢化の危機に直面していたエストニアは、その打開策としてICTによる強化を戦略として立て、1990年代に電子政府構想をスタートさせた。現在は、官民合わせて3,000近いサービスを、すべてIDに紐づけて実施している。

 

個人情報を一元管理するリスクが発生している国

 

アメリカでは、社会保障証番号を口頭で伝えるだけで、本人確認を済ませることができますが、そのために“IDのなりすまし詐欺”が多発し、死亡した家族の年金の不正受給や、IDの売買といった問題なども起こっている。

韓国では、クレジットカードの番号から、住民登録番号まですべてが一つの個人番号で一元管理されています。そのため、その情報が流出したときの被害を想像すると、取り返しのつかないことになりそうです。

 

マイナンバー制度によるメリット・デメリットは表裏一体に思われる。マイナンバーをもう一段普及させるには、目の前のニンジンよりも、まずはその必要性や将来的なビジョン(具体的な有効活用事例)を明確に示すべきであろう。