平均体温はかなり個人差がある / 日本人の平均体温は下がってきている?

 

世の中では新型コロナウイルスの猛威がなかなか収まらないが、新型コロナウイルスを疑う症状の一つに「37.5度以上の発熱が4日以上続く」がある。また、一般に風邪は37.0度以上を発熱の定義としているが、日本人の平均体温について考えてみたい。

 

以下のグラフの通り体温は人によって個人差がかなりある。

体温を上げる理由 | コンセプト(こだわり) | ジェイ・コスモ株式会社

 

 

1957年に東京大学が調査をおこなった結果では、10歳~55歳の健康な男女3,000人の平均体温は36.89度±0.34℃という結果が出た。当時は低体温の人は少なく、実に7割の人が36.6度から37.2度に入っていた。

 

日本人の平均体温は下がってきている?

一方で、近年、平熱が36度以下といういわゆる低めの人が増えているといわれている。

 

2011年のテレビ番組の調査では、調査対象となった日本人300人の平均体温は36.2度だった。また、テルモ株式会社が2008年に行ったインターネットの調査では、大人の平均体温が36.1度、子どもでも36.4度。いずれも参考データであるが、1957年時の36.9度と比べるとかなり低い。



 

60年前と現在では日本人の体温の平均は0.3〜0.5度近く下がっていることになるが、その理由の一つとして、現在のライフスタイルが明らかな運動不足になっていることが挙げられてる。家事ひとつをとっても、50年前はすべて手作業で掃除、洗濯、料理などを行い、その上で畑仕事をするなど、日常的な運動量が大変多かったのです。それに比べ、現代の生活では、乗り物や家電の充実によって日常生活における運動量は低下している。

 

二つ目の理由は、代謝率または消費エネルギー量の低下によるものと考えられる。過去200年で達成された医学の進歩や衛生状態の改善、食糧供給および生活水準の向上などによりヒトが体内で炎症を起こす機会(消費エネルギーの低下)が減ったことが、体温の低下につながっている。さらに、冷暖房器具の開発により、一定の温度で快適な生活を送れるようになったことも代謝率の低下に関与していると考えられます。




時間帯によっても体温は変わる


普段の体調管理で押さえておきたい,体温のはなし | 医師ブログ

 

 

体温は、基本的に早朝は低く、夕方に高くなる。また、体温は、熱が出る病気にかかっていなくても、運動、時間、気温、食事、睡眠、女性の生理周期、感情の変化などにより変動しています。また、ヒトには朝・昼・夜と、24時間単位の体温リズムがあります。これを「概日リズム」という。普通は1日のうちで早朝が最も低く、しだいに上がり、夕方が最も高くなる。1日の体温の差はほぼ1℃以内です。また、高齢の人は気温が高いと高めになり気温が低いと低めになる傾向もあるようだ。



低体温の人は長生きする

実は、低体温の人のほうが長生きしているという傾向は複数の研究で示されている。これには、『活性酸素』が関わっている。体温が高い人というのは、いわばたくさんの燃料を使って走っている機関車のようなもの。ボイラーに石炭を次々に放り込んで、ガンガン燃やしている状態。その結果、機関車の場合は大量のススが出てきますが、それが人間では活性酸素に当たる。

 

活性酸素は、DNAを傷つけ、疾患のリスクを高めていると考えられています。100歳を超えた『百寿者(センテナリアン)』には3つの特徴があるが、そのひとつが、『体温が低いこと』なのです」105歳で亡くなるまで元気に過ごした元聖路加国際病院名誉院長の日野原重明氏は、'12年(当時100歳)の講演の際、「私は起床時には35度あるかないかです」と語っていた。

 

但し、直腸温35度以下の「低体温症」には注意が必要

 

低体温が進むと、体温が下がり過ぎて身体の機能が保てず、さまざまな症状を引き起こす「低体温症」を発症するようになる。低体温症は、深部体温として直腸の温度を測りますが、直腸温が35度を下回れば、低体温症と診断されます。症状としては皮膚の血管の収縮、震えや筋肉の硬直が見られたり、心拍数、心拍出量、血圧なども低下し、不整脈が現れたりもする。ひどい場合は昏睡状態となる。

 

体温は健康のバロメーターであるが、現在のコロナ禍ではそれに加えて個々の活動や行動規制に直結するものである。平均体温については60年前の東京大学の調査が現在でも一般的に使用されている。今一度、平均体温や低体温について再度調査の上で、社会全体で認識を合わせるべきではないだろうか。