米大統領選の世論調査は正しいのか?世論調査が選挙結果に与える影響

 

米大統領選挙についてのロイター/イプソスの最新全米世論調査によると、乱戦模様となった9月29日の第1回候補者討論会後も、民主党候補バイデン前副大統領は共和党トランプ大統領に対し9ポイントのリードを維持した。

調査は9月29日から10月1日に実施。投票先では回答者の50%がバイデン氏、41%がトランプ氏だった。4%は両氏以外で、5%は決めていないとした。9月上旬以降、計7回の調査のうち6回で、バイデン氏が9ポイントリードだったことになる。

 

 

CNN.co.jp : 依然として残るバイデン氏大勝の可能性 米大統領選

 

米大統領選の仕組み

 

大統領選では、特定候補者(=トランプ氏かバイデン氏か)への投票を約束した「選挙人」を有権者が選ぶ仕組みだ。選挙人の合計は538人。それを全米50州と首都のコロンビア特別区(=ワシントンD.C.)に対し、人口規模に応じて割り振る。そしてほとんどの州では、州全体の得票数が1票でも多い候補者がすべての選挙人を獲得する(=「勝者総どり」方式)。そして過半数の選挙人(270人)を獲得した候補者が、大統領になる仕組み。

 

このため、全米の総得票数で下回る候補者が当選する「番狂わせ」が起こり得る。例えば前回2016年大統領選では、民主党ヒラリー・クリントン国務長官の総得票数がトランプ氏より約290万票も多かった。だが、トランプ氏が獲得した選挙人の数で上回った結果、第45代大統領に就任した。クリントン氏はカリフォルニア州などの大票田で楽勝したものの、オハイオ州などいくつかの激戦州で競り負けたのが響いた。米大統領選ではこうした「逆転現象」が過去5回も起きている。

 

世論調査は正しいのか?

 

どの世論調査でも多少の「偏り」は避けられないが、調査を実施する主体(=調査会社やメディアなど)が変わると、結果自体が変わってしまうケースは少なくない。例えば、保守層の支持が厚いFOXテレビと、リベラル色の強いCNNテレビが大統領選に関する世論調査を行うと、両社の調査の「偏り」が結果に大きな差をもたらしても特に不思議ではない。

 

2016年の大統領選に実施された世論調査では、サンプルは単に「成人」或いは「有権者登録済みの者」を対象にして「投票する」と表明した者ではなかった。その結果(民主党支持者に多い選挙に行かない者が含まれるので)サンプル中の共和党支持者の割合が低くなった。共和党支持者は全投票者の33%を占めていたが、世論調査では共和党支持者の占める割合は26%〜24%と低めに出ていた。

 

今回の世論調査はインターネットを通じて行われているが、サンプルの抽出がどのように行われたかは分からないものの、一定の偏りがある前提で見た方が良さそうである。

 

2016年の選挙結果に見る世論調査の影響

 

米大統領選】トランプ氏とクリントン氏の獲得した州(地図) - 投資の ...

 

ご存知の通り、2016年の米大統領選挙ではトランプが大部分の世論調査の予測を覆して当選した。世論調査そのものが投票行動に影響を与えたのではないかと言われている。特にフロリダ州では、トランプとヒラリー・クリントンの支持率が拮抗していた。しかし、トランプの支持者には熱心な支持者が多かったのに対して、ヒラリーの支持者には熱心な支持者があまり多くなかった。トランプの不利が報じられた結果、ヒラリーの支持者の投票率が下がったのに対して、トランプの支持者の投票率が上がった。

 

また、世論調査が大きく外した理由と考えられたのが、ヒスパニック系の中でのクリントン氏支持率だ。投票前の調査によるとクリントン氏は前回のオバマ大統領再選時よりも、ヒスパニック系から強く支持されていると言われていたが、どうもこれが不明確であった。出口調査の結果でもトランプ氏が予想以上に票を得たとの調査もあるが、有権者に占めるヒスパニック系比率が9割を超える地区の開票結果を見ると、クリントン氏は前回のオバマ氏よりも10%ポイント程度票を失っているところがあった。人口が急増しているヒスパニック系の動向を捉えることは、今回も重要なポイントになる。

 

所謂「隠れトランプ支持者」の存在が調査結果を歪ませ影響を与えたと言われたが、人種差別者と誤解されたくないので「私はトランプ支持者です」と答えることを躊躇する有権者や,逆に,ヒラリー支持と言いながら投票に行かない人が多く存在した。多くのメディアが反トランプの立場で報道した反作用として,この影響が出たものと思われる。

 

今回の選挙は郵便による投票が多数を占める可能性があり、世論調査の信頼性は以前にも増して低い可能性がある。トランプ・バイデンのどちらが勝利を収めるかは最後まで目が離せない。