自動車各社の不正はなぜ続く?スバルの安全性能での不正は極めて深刻

 

スバル、新たな不正報告 ブレーキやメーター検査 燃費測定は1800台超

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 SUBARU(スバル)は28日、新車出荷前の検査工程をめぐる不正の原因などをまとめた調査報告書を国土交通省に提出し、発表した。ブレーキの性能やスピードメーター(速度計)の誤差など安全性に直結する検査でも新たな不正が判明。燃費・排ガス測定の不正でも対象車が6月公表時の計1551台から1869台に拡大した。スバルの品質管理態勢の信頼はさらに揺らぎそうだ。

 燃費・排ガス測定の不正は、群馬製作所(群馬県太田市)に国交省が5月に立ち入り検査したことを契機とする社内調査で発覚。6月から弁護士中心のチームが再調査した結果、燃費などの測定以外でも不正が確認された。ただ国の保安基準は満たしており、リコール(回収・無償修理)の届け出の判断は再検証後に行う。

 国が定める燃費測定基準の範囲を超えた走行条件で車を走らせて燃費を算出し正常なデータとして処理していたことにとどまらず、別の測定データをコピーする悪質な手口も判明。車輪の曲がる角度などを確かめる検査が不適切に行われていたケースもあった。

 中村知美社長は東京都内で記者会見を開き、「ステークホルダー、社会の皆さまにご心配とご迷惑をおかけしたことを心よりおわび申し上げます」と謝罪。経営陣からの意識改革や品質方針の再検証などを柱とする再発防止策も発表した。

(産経ニュースより)

スバル、新たな不正報告 ブレーキやメーター検査 燃費測定は1800台超 - 産経ニュース

 

 

過去の自動車各社の検査不正

 

スバル(2018年6月5日)

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具体的には、群馬製作所(群馬県太田市)で新車の燃費と排ガスを抜き打ちで検査する際、法律で定めた速度を逸脱したのに、検査をやり直さずに有効なデータとして処理していた。また、試験をする部屋の湿度が基準から外れていたにもかかわらず、有効としたものもあった。2012年12月から5年間行われた抜き打ち検査6530件で、本来ならば再検査の必要があったデータが927件あることが判明した。

 

日産自動車(2018年7月9日)

日産自動車九州を除く国内5工場で、完成車抜き取り検査の排出ガス・燃費測定試験において、測定値改ざん等の不適切行為があった。

日産自動車では昨2017年9月、無資格者による完成検査問題が発覚し、国土交通大臣からの指示による再発防止策として「全業務の法令遵守状況の確認」を行っていた。その中で、排出ガス・燃費測定試験を行う際に、試験環境を逸脱した試験を行っていた車両が690台、測定値を書き換えて検査報告書を作成していた車両が913台あったことが発覚した。

 

スズキ(2018年8月10日)

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出荷前の新車の排ガスや燃費などを調べる抜き取り検査で、無効なデータにもかかわらず有効と判断したもので、新車の出荷前に排ガスや燃費性能を100台に1台の割合で調べる「抜き取り検査」という工程で、データを測定するために車を走らせる速度が国のルールから外れていたもの。

湖西工場、相良工場、磐田工場でそれぞれ抜き取り検査をした1万2819台のうち計6401台が不正検査だった。対象モデルは軽自動車「アルト」や小型車「スイフト」のほか、生産終了した車両も含めて、合計30車種に上る。中でも湖西工場は不正比率が7割を超えており、ほぼ常態化していた。

主力の軽アルトなど30車種(旧モデルを含む)で不正があり、検査に関与した検査員19人は、不正にあたると認識していなかったようだ。

 

スズキ(2016年5月31日)

スズキは国土交通省に燃費データの不正問題についての社内調査を報告した後、同省で記者会見した。このなかで鈴木会長は、「走行抵抗の申請で国土交通省が定める規定と異なる不正な取り扱いを行っていたことを深くお詫びする」と、謝罪した。スズキは、不正な測定を行っていた自社モデル14車種の正しい測定による燃費を社内で再測定した結果も同省に報告し、公表した。いずれも国が認定したカタログ燃費値より良い数値となっており、平均では1.6%上回っている。

 

尚、この不正問題の責任を取り、2016年6月29日付で鈴木修会長兼最高経営責任者(CEO)は、CEO職を辞任した(会長職には留まった)。

三菱自動車(2016年4月20日

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軽自動車4車種で燃費を実際よりもよく見せるためにデータを改ざんしていた。テスト時にタイヤなどの抵抗の数値を意図的に不正に操作することで、実際の燃費よりも10~15%程度に上乗せしていたという。対象車種は三菱「ekワゴン」「ekスペース」と、同社が日産自動車に提供している「デイズ」「デイズルークス」の4車種で、計約62万5000台。

不正問題発覚後の2016年5月12日に、三菱自動車日産自動車から2370億円の出資を受け(株式34%)、事実上傘下に入った。

自動車の自己認証の制度

自動車メーカーが新車を生産・発売する場合、型式指定が必要となる。それを取得するためには、メーカーが提出したサンプルの車について保安基準などを国が審査して型式指定後、それを得たメーカーが自社で保安基準などを改めて確認し、完成検査終了証を発行する仕組みだ。この制度によって、工場から出荷する新車は車検を受けたものと見なされる。

国の審査は、国土交通省の外郭団体である自動車技術総合機構が屋内試験場にある「シャシーダイナモ」と呼ばれるローラ上の機械で行う。安全や環境性能が確認されるが、燃費や排ガスもここで確認された値が販売時のカタログに記入される。

実際の路上を走る場合には、空気抵抗などがかかるため、シャシーダイナモにメーカーが予め計測した走行抵抗値などのデータを入力して、試験が行われる。

この仕組みは、メーカーが計測したデータに不正がないという「性善説」の上に成り立つものである。利点は行政手続きの簡素化である。型式審査は変更分も含めると年間に約4000件ある。メーカーの申請数値を一つひとつ確認していたら、行政の肥大化にもつながりかねないからだ。

 

性善説には限界あり!?

燃費についてはこれまで消費者からも、カタログ値通りの燃費が出ないなどの苦情が寄せられ燃費基準そのものが疑問視されていたが、燃費不正の拡大は、開発競争が激化し、燃費目標が引き上げられていったことが一因だと言われている。

今回のスバルの安全性に関わる不正は、今までの燃費不正とは性質が全く異なり極めて深刻であり、自動車メーカーが消費者の信頼を裏切る行為に走ったことは事実である。自動車産業はすそ野が大きく日本経済にも大きな影響を与えるため、今回の不正発覚を機に自動車メーカー各社のみならず、国土交通省とも協働の上、抜本的な対策を早急にし講じてもらいたい。